新君のファイヤーメソッド−平井新の演技論−


・はじめに
 役者を始めたばかりの方は、舞台上でどう動いて良いのか判らなかったり、足が舞台に根が生えたように動かなかったり、手がじゃまでしかたがなかったりします。また、演出のダメが良く判らなく、どうして良いのか混乱してしまうことがあったりします。
 はじめて演出をする場合も、同じように、役者にダメを出してもなかなか伝わらず、どうダメを出せば良いか判らなくなったり、役者はダメの通り表現(動こうと)しているのに、何かしっくり(ぴったり)こない場合があります。
 このように、初めて役者をやったり、初めて演出をする場合のアドバイスの一つが、平井新の提唱するファイヤー・ループ・メソッドです。
・ファイヤー・ループ・メソッドとは
 ファイヤー・ループ・メソッドのファイヤーは、F・I・Aで、【Feeling】【Image(Imagination)】【Action】の頭文字を取ったもので、それぞれ【感性(感じる力】【想像(想像力】【表現・表出(表現力】を意味します。
ループはその3つが輪になっていることを意味し、メソッドは方法と言う意味です。
・ファイアー・ループ・メソッドの説明
 ファイヤー・ループ・メソッドでは、役つくりを図1の関係でとらえます。
これだけでは、良く判らないと思います。そこで、数人集まって、次のエチュードをやってみてください。
・無対象の長縄飛び(実際にやってみることをお勧めします)
 まず、2人が長縄飛びの回し手になり、長縄があるつもりで縄を回します。他の人達は、その縄を順番に跳んでみます。
どうでしょう、上手く跳べましたか?上手く跳べたり、ひっかったりしたことが周りで見ていて判りましたか?
さて、この時、ロープを回した方達は、自分の手の動きや、腰の動きを意識しましたか?跳んでみた皆さんはどうでしょう、皆さんが舞台で感じるような、どう手を動かしたら良いのだろう?とか、どう体を動かしたらいいのだろう?などと言う迷いは生じましたでしょうか?ほとんど、無意識のうちにロープを回したり、跳んだりしたのではないでしょうか?
長縄の回し手になった人は、相手のタイミングを感じ、縄を想像し、相手に会わせて縄を回すと言う表現をしたわけです。跳ぶ人達は、縄を感じ、縄を想像し、それを跳ぶと言う表見をしたわけです。
この、感じる、想像する、表現する、と言う流れがファイヤー・ループ・メソッドの基本の流れになります。
初めて役者をやったり、初めて演出をする場合、どうしても表現のみに目が行きがちです。もちろん伝える方法が表現しかないわけですから当然と言えば当然です。しかし、表現は、内容を表すためのラベルやタグ、包装紙や容器のようなものです。内容が無い限り、よほどの天才的表現者でないかぎり、形だけの表現では内容を観客や相手役に伝えられません。 ダメを受けたり、ダメを出したりする場合、表現でのダメであることが多いのですが、何を感じ、何を想像しているかが重要になります。その部分がハッキリしていなかったり、出来ていないと、役者は表現が上手く行きませんし、演出はうまくダメが出せません。また、お互いのズレが判らないままとなり、演出のダメが理解できなかったりします。
それでは、感性、想像力、表現力について1つずつ説明してみます。 感じない、と言う人もいますが、何も感じないことはないと思います。感じ方が違うだけで、感じることは感じていると思うのです。
例えば、騒がしい教室での休み時間、あちこちのグループが、笑ったり、叫び声を上げたりしていますが、もし、その中で、本当のケンカが始まったとしたら、その声がそんなに大きくなくとも直ぐ判る(感じる)はずです。もちろん個人個人によって感じ方は違うでしょう。ある人は、嫌悪感を抱くでしょう、ある人は、止めなくっちゃと思うでしょうし、興味を引かれる人(面白がるひと)、あるいは恐れを抱く人、と様々ですが、何も感じないことは無いでしょう。要は、その役の人物が、舞台上(台本上)その時、何を感じているかを感じ取ることが必要です。
私達の持っているイメージは、とても不確かなものです。たとえば、「十円玉」と言いますと、ほとんどの人はそのイメージを持っていると思います。ところが、その「十円玉」を絵に書いて見なさい、と言うとなかなか正確には書けません。裏の図柄が何であったかもハッキリしません。もっと簡単な例で言いますと、「卵」を実物大で紙に書いみて下さい。卵は形状が簡単ですので皆さん書けると思います。しかし、本物の卵を持ってきて比べてみると、実物大に書いたつもりの卵は、実物に比べてとても小さい事が判るでしょう。卵ってけっこう大きいのです。(誰ですか、私はウズラの卵を書いた、などと醜い言い訳をしている人は!−そんな言い訳をする人は、・・私は好きです−)このように、自分ではハッキリしているつもりのイメージが、実はハッキリしていない事が多いのです。
イメージをなるべくハッキリ、クッキリと構築することが必要です。(イメージの構築の方法については「台本の読み方」の講座を参照して下さい。「台本の読み方」は、イメージを構築する。と言うことが中心に書かれています)
表現が上手く行かないときは、体の全てを使って表現しているかを確かめてみます。セリフ回しだけでなく、顔の表情、目の動き、手、足、顔の方向(首)、肩、腰、膝、肘、手首、足首、指、つま先、髪の毛(女性が髪の毛を耳にかき上げる動きって、色気がありますよね)など、体の全てを使って表現してみます。一歩前に出るだけでも、顔の方向をかえるだけでも結構表現が楽になる場合があります。

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